医用コンセントって何?色の違いから基礎解説
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こんにちは、ニシムの「むぅこ」です。
皆さまは、「医用コンセント」とは何かご存じでしょうか。
医療の分野に携わったり、勉強をされている方は、聞いたことがあるとおっしゃるでしょう。今回は、医療現場に欠かせない電源設備のコンセントについて、医用に特化したUPS「医用UPS」に詳しいニシムの先輩に聞きながら、勉強していきたいと思います!
まとめ~医用コンセントとは、JIS規格に適合した医療現場で使用するコンセント~
医用コンセントとは、医用差込接続器のプラグ受で、刃受、配線接続端子、絶縁物の外郭などで構成し、造営材に固定できるものをいう。
医用コンセント本体は、JIS T 1021「医用差込接続器」に適合していることが必要である。出典元:一般社団法人 電気設備学会,病院電気設備の設計・施工指針~JIS T 1022:2018に基づく病院電気設備のあり方~
むぅこ(以下、む):突然難しい言葉が出てきましたね…。つまり、どういうことでしょうか?
ニシムの先輩(以下、ニ):文字で説明すると難しいですね。医用コンセントとは下の図のような、JIS規格に適合した医療現場で使用するコンセントのことをさします。
ニ:このJIS規格(JIS T 1021「医用差込接続器」)では、一般用差込接続器の JIS 規格である JIS C 8303 「配線用差込接続器」より機械的強度に関する要求が高いレベルで規定されています。下記のような医用コンセントや医療機器に付属している 医用プラグが要求事項の対象になっていますよ。
この規格は,医用電気機器と周波数50 Hz又は60 Hzの交流100 Vの電路との接続に使用する医用差込接続器について規定する。
出典元:JIS T 1021「医用差込接続器」1 適用範囲
む:へぇ~(難しい)。
ニ:この規格に適合した医用コンセントは、主に病院や診療所など、高度な安全性が求められる場所で活躍します。
内線規程によって、病院、診療所などにおいて、医療用電気機械器具を使用するコンセントには、JIS T 1021(医用差込接続器)に適合するものを使用し、JIS T 1022(病院電気設備の安全基準)に基づいて接地工事を施す必要があるんですよ。(内線規程3202-3より抜粋しています)
む:病院には病院専用のコンセントを使用しなくちゃいけない、ということですね。
ニ:そうですね。医療が行われる部屋(医用室)には、患者さんの保護を目的に医療用3Pコンセント(または2Pコンセント)が必ず使われています。
む:ふぅん。ところで、医用コンセントは病院などで使うということですが、色がたくさんあると聞きました。白色だけじゃいけないのですか?
ニ:では、病院にはどのようなコンセントの色があるのか勉強しましょう。
病院のコンセント色の使い分け
ニ:一般的な病院には、白色・赤色・緑色のコンセントがあります。
白色コンセントは商用電源(皆さんのご家庭にもある一般的なコンセント)、赤色コンセントは(停電時や復電時に一時的に電力供給が止まってしまうが)自家発電装置への回路に接続されている一般・特別非常電源、緑色コンセントは停電時にも継続して電力供給される無停電非常電源です。
白色<赤色<緑色の順に、電源の信頼性は高くなります。
む:緑色のコンセントが一番繊細で重要な設備に電力を供給する…っと(メモ)。う~ん、具体的にどんな機器に繋ぐのでしょうか?
ニ:三色のコンセントは使用用途に応じて、下の表のように分けられます。
ニ:緑色のコンセントは、主に人工心肺装置や人工呼吸器、無影灯などの「生命維持装置・治療機器」に接続されます。赤色のコンセントは、主に輸液ポンプや内視鏡、電気メスなどの「計測・診断・治療機器」、白色のコンセントはX線などの「放射線装置」などに使われます。
む:重要度によってしっかりコンセントの色が分けられているのですね…。
ニ:はい。ただし、病院によってはこげ茶色のコンセントも存在する可能性があります。これは、以前非常電源は「赤色」or「こげ茶色」と規定されていたため、その名残といえます。
む:まだなかなか、院内ですべてが統一されていないのが実情なのですね。
Tips!病院・診療所の非常電源とは
ニ:ここで少し脱線。医療現場では、停止すると患者さんの生命にかかわる医療機器や、病院機能を維持するための重要な機器などがあります。そのような機器は、非常電源を用いて、電力の供給が止まらないようにされているのですよ。(コンセントからの商用電源が停電した場合に速やかに電力供給を行います。)
この非常電源は、電力供給の違いから①一般非常電源(約40秒で回復)②特別非常電源(約10秒で回復)③無停電非常電源(無瞬断)に分けられています。
再度になりますが、非常電源ではない商用電源が白色、①②の非常電源が赤色、③の無停電非常電源が緑色のコンセントです。
▼無停電非常電源について詳しく知りたい方はこちら!
医用コンセントの注意点
む:医用コンセントを扱う時に、気を付けることってあるのでしょうか?
ニ:確かに、一般コンセントと何が違うのか?ということは気になりますよね。特に注意が必要なコンセントは「緑色」のコンセントです。
む:緑色!無停電非常電源!一番信頼性の高い電源コンセントですね。
二:はい。緑色コンセントはUPS(無停電電源装置)の出力となっています。接続例としては、
分電盤→【UPS】→絶縁トランス→【緑色コンセント】
などです。この緑色コンセントの先に「生命維持装置・治療機器」等が接続されます。その緑色コンセントにドライヤーや掃除機・ヒーター・電気毛布・電気ポットなどを繋がないように気を付けないといけません。
む:なぜですか!?入院ベッドにあったら挿してしまいそうです…。
ニ:ドライヤーや掃除機は突入電流の大きな機器、ヒーターや電気毛布・電気ポットは半波整流を行う機器です。これらの機器を挿し込んでしまうと、コンセントの先にあるUPSの故障の原因となってしまいます。
む:また難しい言葉が…。
ニ:簡単に言うと、突入電流(または始動電流)は電源を入れたときに、一時的に流れる大電流の事です。ドライヤーなどは電源を入れたとき、大きな電力を要します。半波整流は少し技術的なので、ここでは引用だけとします。
半波整流回路とは、電流をある正・負どちらかの方向にのみ流れるようにする回路(整流回路)のうち、交流電流において正・負の両方の方向に流れている電流のどちらか一方だけを流すことによって整流を行う回路のことである。
出典元:weblio辞書 IT用語辞典バイナリ「半波整流回路」〈https://www.weblio.jp/content/半波整流回路〉(最終アクセス2021年4月12日)
こういった機器は、緑色コンセントに挿し込んではいけません!
む:分かりました。気を付けるようにしないといけませんね。
Tips!アース付きコンセントとは
む:医用コンセントは「医療用3Pコンセント」(2Pコンセントもあります)を使っているということですが、アース付きコンセント(刃が3つ)ということですよね。アース付きだと安全というイメージはありますが、詳しく教えてください。
二:はい。アースは地面まで電気を誘導し、私たちの感電を防いでいます。電気的ノイズや静電気も地面に逃がす役割があるのですよ。ただ、アース付きコンセントといっても形状が2種類あります。
ターミナルタイプと3Pタイプです。
む:医用コンセントは3Pタイプを使用するのですよね。
ニ:そうですね。逆に家庭でよく見るのはターミナルタイプだと思います。しかしこちらは、アース線だけ外れてしまう危険性があります。3Pタイプは、アース刃が一番長くなっており、抜ける時は最後にアースが抜けるため安全です。そのため医療機器に取り付ける場合は、3Pタイプが認められています。
む:なるほど…。医療現場の電源について、また一つ詳しくなりました。これからも、疑問に思ったことは沢山調査していきたいと思います!
最後まで読んでくださり、有難うございました。
【参考文献】
[1]一般社団法人 電気設備学会,病院電気設備の設計・施工指針~JIS T 1022:2018に基づく病院電気設備のあり方~,2018
[2]日本規格協会,病院電気設備の安全基準 JIS T 1022:2018
[3]日本規格協会,医用差込接続器 JIS T 1021:2019
[4]日本規格協会,配線用差込接続器 JIS C 8303:2007
[5]一般社団法人 日本電気協会需要設備専門 部会,内線規程 JEAC8001-2016